連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
る
祈る人は闇の中で立ち上がり
川面を見つめた
あの声のする方角へ
行かなければならぬ
この川沿いに歩きつづければ
辿りつけるに違いない
祈る人は確信した
そのようにして
祈る人の川沿いの旅は
新たな裏づけを得られ
確かな野望が
祈る人の身内にわき起こった
また
もうひとつの一日
いつもと同じ 祈りと
歌と
川の流れと
川沿いの歩行があり
祈る人はまたも
川面に向かって立ちつくす
遠くで自分を呼んでいる
確かな声
ほら
また聴こえた
やっぱり呼んでいるのだ
わかったよ
俺は君のところへ近づいているよ
祈る人はひとり
静かに微笑んだ
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