連作「歌う川」より その2/岡部淳太郎
 

こんなにも長い間
橋の下の川原に坐りつづけて
――お前さんは、
男はつづけた
――お前さんは、どうやら俺が待っていたものの、
  そのうちのひとつではあるようだ。お前さん
  は人じゃないな。人のように見えるが、人で
  はない。云ってみれば、新しい「人」という
  ところだ。
祈る人は真実を云い当てられて
少しばかりうろたえた
――お前さんが来てくれて、俺は嬉しい。だが、
  お前さんは俺が待っているもののほんの一部
  でしかない。俺が待っているもののすべてに
  会えるのは、まだまだ当分先のことになりそ
  うだ。その間に、死が何度俺を連れ去るのだ
  
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