肉体屋 またの名をヤドカリ屋/はじめ
青年にしか出来ない作業だ
そして完成した骸骨を月の光に当ててじっと乾燥させる
青年と婆さんは大金を手にしたが 別段裕福な生活をしようなどとは思っていない
ただ店を切り盛りする為のお金が残ればそれでいいと考えている
そうやって青年と婆さんは細々と店を続けている 青年は婆さんの孫だ
今日も店は大繁盛だ
店は深夜手に入れた骸骨と寝る間も惜しんで縫い上げた人間サイズの人形が全て売り切れると閉められる
買い物客は──魂と影だが──生前の自分に似た姿を探す者が多い
中には自分がなりたかった姿を買う者もいる
窮屈ではないか 大き過ぎはないか 買い物客は新しい人生の為に真剣に選ぶことに余念がない
やがて今日もまた大繁盛の末 午前中に店は閉まる
あなたももし肉体にお困りなら この店にぜひ一度足を運んではいかがだろうか?
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