春の光/なかがわひろか
洗濯物が風に揺られて
乾きやすい季節になりました
洗う回数も増えてしまって
あなたの香りもすぐに消えてしまいます
四月の暖かさは
すべてを曖昧にしてしまうから
あなたと過ごした時間のことも
時々疑いそうになります
声、高らかに
三度上の春の旋律に乗せ
歌ってみます 嗚呼 嗚呼
あなたもどこかで
呼応してくれているのでしょうか
下手くそなコーラスと笑ってくれるでしょうか
少し陽の暖かさが憎らしく思える
それでも本当は少し
酩酊しそうになるこの季節が
よかったと思っているのです
悲しみにも鈍くなれるから
声、高らかに
春の風の音かき消すように
叫んでみます 嗚呼 嗚呼
春雷の音と
紛ったとしても構わないから
音痴だななんて笑い飛ばしてくれていいから
嗚呼どうしてこんなにまで太陽は優しい
(「春の光」)
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