戦え!青ちゃん/川口 掌
」
その言葉が終わるか終わらないかで、辺りにあった現代詩手帳や詩集が手当たり次第に青ちゃんに向けて投げ付けられる。反撃に転じる暇もないまま次第に部屋のすみに追いやられ、ただただうずくまりお姉ちゃんが去るのを待ち続けた青ちゃん。長い忍耐の時を経てやっとお姉ちゃんが立ち去り、平和な時が訪れた。しかし、そこには青ちゃんの姿は無く、部屋の奥で残像すら消えた青ちゃんの零した涙の跡だけが青く滲んでいる。
夕暮れにオレンジ色に染まる彼の部屋の中で光の届いていない部分、そこで青ちゃんは深く深く落ち込んでいた。自分自身が虚しかった。情けなくてしょうがなかった。身体中に投げ付けられ突き刺さった詩集の詩人達の声が、ずきずきと染み込んでくる。 青ちゃんは身体から詩集を引き抜きぱらぱらと詩人達の声に耳を傾けた。
(そうだ。これからは自然の息吹に耳を傾けよう。天の声に逆らわない様にしよう。)
「世界平和の為に命を捧げる!」
そう叫び立ち上がった。
窓辺に立ち、夕陽を見つめ静かにうなずく青ちゃんの姿は、どこか自信に満ち溢れているように見える。
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