青いピースサイン/
佐野権太
折りたたまれてゆく季節は
いつか振り返れば
一瞬なのかもしれない
湧きいずる水におされて
いま
雲母のいちまいが
なめらかに遠ざかる
使いきれなかったノートの白さ
描ききれなかったエピローグ
不完全な僕らは
どこまでも
不完全のままで
それでも忘れたくないのは
あの、跳ね上げた毛筆の角度
危ういものを受けとめるときの
手のひらのかたち
かなしみをぶつけ合った
その手を
互いの肩にのせ
いま
照れ笑いの瞬間
青いピースサイン
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