春の詩を書くために/ブルース瀬戸内
 
風が時にそうであるように
春の詩は私たちに随分とつれない。

褪せた色の春が私たちにもたらしたのは、
決意という無限くらいだろうか。

望まなかった過去を
無理に思い出させてどうするというのだろう。
それは、すでに泡立ったアクアソープに対して、
泡立たない自分を想像できるか、と詰問するほどに愚かだ。
我々はもう「そこ」にはいない。「そこ」にはいただけだ。
果たして、今は過去になりつつある。

時を刻むことで増える約束もある。
時間が不可逆だから未来へ思いを馳せることもできる。
明日が昨日ならば
明日のための今日の蓄積は存外に無目的だ。
地球が大胆で細心な生物音に支
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