桜の面影/ぽえむ君
の人の顔が見えた
初めて見る顔だった
けれどもその人が誰であるのか
ぼくにはわかった
どこか厳しくそれでいて優しかった
後ろから母の呼ぶ声が聞こえると
それっきり顔も見ることもなかった
その家に行くこともその日だけだった
あれから何十年が過ぎただろうか
場所を問わず毎年桜が満開に咲くと
その木の下から空を見上げる
不自然さを感じたのだろう
自分の子どもから
「どこを見ているの?」
と言われたことがある
「あ、ああ、顔だよ、桜のね」
そう答えた後
親子でただ青い空を眺めていた
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