輪郭図鑑/千波 一也
知っていることを知ることで
わたしの輪郭は
かたちを為す
そう、
知らないことも同義であるけれど
わたしのどこかが喜ぶように
いつもいつも
知ること、と記している
頁の終わらないことがわたしの図鑑で、
それゆえ指は、
やわらかに、
細く
輪郭という名において
あなたは、
あなた、
確証のない彼方まで
あなたのあなたは守られて
もちろん、わたしはこそばゆい
かろやかな、花
すみやかな、鳥
かぜが一つ、なら
つきも一つ、かならず
なぞることは、ちいさな結び目
隠れてゆくものを
そっと許して
ながされて
だれの背中もいとおしい
いつでも
互いを呼びあえるよう、
憶えることには限りをもって
[ｸﾞﾙｰﾌﾟ]
戻る 編 削 Point(12)