光る墓標/大覚アキラ
 
明け方のビル群は
墓標のように見える

おれはタクシーを拾って
車のまばらな御堂筋を
一直線に南下しながら
疲れた頭の片隅では
死ぬまでに稼げる金を
ぼんやりと計算している

アスファルトの微妙な起伏が
磨り減ったタイヤから伝わって
バックシートに沈み込んだ
おれの背骨を軋ませる

カラスの羽根を生やした天使が
フロントガラスに唾を吐きかけた

カーラジオから流れる
流行のポップソングが
命の重さってやつを
切なげに歌っている

朝日を反射するビルが
目も眩むような輝きを放って
おれを乗せたタクシーは
逆光の中を
黒い点になって
吸い込まれていく

墓標に記された名は
眩しすぎて読めない
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