火事場を知るものはいない/hon
 
「法外なキャベツの値段」

買い物がからみついて
キャベツが吸いこまれた
買い物がからみついて
キャベツが吸いこまれた
青くさい微熱のその隣りに
黄いろい訪問客があった
あるいは台風をあざなう
黄いろい訪問客があった
訪問客への見かえりに
キャベツは吐きだされた
すると鐘がひとつ鳴る
訪問客が多すぎて
キャベツが足りなかった
すると鐘がみっつ鳴る



「火事場を知るものはいない」

ジルコニアの花嫁
街はパイ皿で運ばれる
熟練のシタールと指先の血
吟遊詩人が階段を倒れていた
諍いで髪を纏めあげた
赤いヴェールの乙女が
あまつさえ歳月のナイフを
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