おとうさーん/一絵
 
うちの高校の美術教師(以下、じいさん)がある男の話をしていた。

その男は美術予備校の教師に
『君は武蔵野森に受かる実力を持ってるよ、頑張れば』
と言われそれを信じたそうな。
男は受かるはずも無いのに、毎年、毎年武蔵野森を受験した。
一年、二年、三年、その年も次の年も
受けた、落ちた、受けた、落ちた

じいさんは鼻で笑いながらその男の話をした。
「武蔵野森じゃなくて他の所受けば受かるのにねぇ」

その男はもう31になっていた。
とうとう、男はあきらめ、他の大学を受験した。
そしたら簡単に通ったそうな。
「その人はその学校で10も年の離れた子達から
”オトウサン”と呼
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