赤い血を持つ、醜い者/なかがわひろか
彼女は薄い
皮肉の様な衣を纏う
彼女の小さな唇は
早く咲きすぎた椿のように
真っ赤
醜い者はそれを見て
自分は反対にいると知る
そこにあるのは神の本音
彼女が持つのは
真実の美
彼女はそれでも衣を纏い
己の姿を覆い隠す
濡れた瞳で空気を吸い込む
乾く喉
遠慮する大気
けれど聞こえて来るだろう
吸い込まれる大気の
歓喜の声を
美しい
ただそれは
美しい
醜い者は知った
己の知能の最果てまで
その事実を知った
醜い者は腕を切る
彼女の唇と同じ色の
真っ赤な血が流れている
それはきれいだ
それはあまりに美しい
醜い者は己の中の
対極を知る
(「赤い血を持つ、醜い者」)
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