夜の庭、ハナアルキの棲む/角田寿星
 
義もへったくれもなく
スカートを焼こうとしたりロウソクを全滅させたり
しまいには花火に飽きてきて
ユキにいたってはひとりでお店屋さんごっこをはじめて
それにも飽きてとっとと帰宅してしまった

父さんは
まだ 花火をしていたいんだ。

ヨコヤマ宅で跳ね回るチビどもを尻目に
親父たちだけで
夏の庭に取り残されて花火をしている
親父たちは不良なので
アイスを食べながら花火をしたり
タバコをすったり
線香花火を最後の一本までやり尽くす
「わびしそうだね」
「いや けっこう楽しんでるよ」

すっかり闇に溶けた草むらの向こうは
ただ風が吹きぬけるだけで
土の瘤のうえ もう判別もつかない
ふたつの屍骸が泥にまみれてるけど
誰ひとり 気にも留めやしない

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