rocket/水町綜助
 
には
もう天使の輪っかが与えられていて
今月の支店目標は聖性を帯びて
すべての数値は天空の算式におとされ
酸素と二酸化炭素に変わりすぐに消えた
俺たちは羽根こそないもののロケットで飛び
東京を成功も挫折もひっくるめて飛び越えた
愛知県と埼玉県が遠くに霞んで見えて
俺たちは故郷を思ったが
別に懐かしくはなかった
ロケットには無数の白いカラスと紙飛行機がじゃれついていて
ごうごうと風のうなる中
同僚が言った

空が広い
町が白い
俺たちに意味はない
まったくない

ああそうだ
それでいい
お前は頭が余り良くない
ありていに言えば馬鹿だ
俺と比べるべくもなく馬鹿だ
とんだトンチキ野郎だ

俺は馬鹿ではない
俺は馬鹿ではない


俺たちは空中で罵り殴り合い
きりもみしながら昨日渋谷に落ちた

街は春だった



戻る   Point(13)