あなたを殺した朝に/なかがわひろか
 
あなたを殺し終えた朝
太陽は眩しくて
そして雲は白かった
空は本当の色を取り戻し
空気はただの透明だった

私の目はそれらを映し
私の口は空気を飲み込む
やがて排出されたそれは
またいつか私に戻る

私は知った
私は生きている
私は目で
私は口で
それを知った

私は何度も繰り返す
次第に人間を手に入れる

私は本当は知っている
本当は全てを知っていた
私はやがて
小さな悲しみを育て上げ
温かな涙を零すだろう

私はその雫を
あなたの唇にそっと刷り込む
それを証と
あなたは知る

私は、知る

(「あなたを殺した朝に」)

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