夕暮れの王/hon
 
跳ね橋が大仰に躍りあがって
銀色の甲冑が通りから姿を消すと
野の草は踏みにじられ
海辺での音のない静かな絶叫は
ふもとの町から遠ざかる黒い血だ

精緻に組まれた全体の隊伍をぬって
トランペットが高らかに
秘密の死の分散和音を奏でる

夕暮れの王が
鈍重にテラスへ歩を進めると
熱狂が見上げる群衆の顔から顔へ
さざなみのように伝っていく

――さて、征服による征服、これである!
口唇の角から砕けたガラス片が降りそそぐ
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