ぼくと自転車/望月 ゆき
いなくなる前に もっと
気を配ってやればよかった、と
長くは続かない後悔もしたりして
どのくらい 走ってきたのだろう
ペダルは今や鉛に等しくなっていた
ぼくは ようやく
ようやく ここまで来た
ここが目指していた場所というわけではない
けれど
なぜだか もう急ぐ必要はない気がした
そのくらいまでは 来たのだ と
とにかく
何か 飲み物でも買おう
ぼくは 道の端に自転車をとめた
自販機のルーレットが当たり
ぼくは コーラを2本一気飲みした
げっぷと一緒にぼくの中から
何かが出ていった
ここからは 歩いていこう
コーラの缶を捨てて
ぼくは 今度は自転車にはまたがらず
ゆっくりと 歩き出した
自転車を押しながら
歩き出したんだ
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