小さな朝/夕凪ここあ
うな
古びた時計台
正午と
おやつの時間
流れる音楽
腰の曲がったおじいちゃんが
二日に一回調律
耳が遠いから
少しずつずれている
何もかもやさしさで出来ている
パパは
町外れのボタン工場で働いている
船乗りだったらかっこいいのに
夕方頃帰ってくると
おみやげに
小さなボタンを
もらってくる
売りものにならないものだから
少しだけいびつ
だけどきれい
もしもパパが船乗りだったら
毎日帰ってこれないから
やっぱり
ボタン工場でよかった
引き出しに
丁寧にしまわれたボタン
明日
わたしの一番の
お気に入りを
ともだちに
あげよう
一緒にパン屑を撒いて
きっと
手のひらが
くすぐったくて
笑える
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