「路上」から始まるABC/んなこたーない
(「マレー蘭印紀行」「どくろ杯」「ねむれ巴里」「西ひがし」、あるいは詩集「鱶沈む」なども入れていい)
サル・パラダイスにしろ金子光晴にしろ、根はかなりのロマンティストではないかと思う。
二人に共通して興味深いのは、おのれの身に降りかかってくる狂気や混乱にたいして
殉教者のごとく受動的でありながらも、それをリアリストの目でもって観察出来るという、その二面性である。
鮎川信夫が金子光晴について、
「生得のリアリストというよりは、難破して現実の岩にぶつかったロマンティストといった印象」を受けると述べたのは、
まさに正鵠を得たものだと思われる。
ひとりは狂人と出会うことによって、ひとりは時代
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)