お百度参り/なかがわひろか
一人の女
残す素足の跡が
雨路に流れる
長い黒髪
滴る水音に
そっと耳を澄ますのは
女がまだ止まぬ証か
一人の男
年老いた男
女の後姿に
己を重ねる
空に散った友よ
知らぬ国の土に還った、肉片よ
我は思う
我は忘れん
皆の雄姿を
一人の少女
死を知らぬ未だ幼き少女
然れど弟の泣き声に
ただならぬ悲壮を見たか
買って貰ったばかりの傘
それでも水に濡れる肩を知る
少女はまだ分からない
今は知らないままでいい
目を閉じ
雨音に泣き声をかき消せばよい
女のポケット
小石の擦れ合う
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)