文鳥/水中原動機
 
な人だった祖父を、窮屈にも思っていた。窮屈で、祖父から離れたくて父と結婚した、とも。

その祖父は、死に際、母を幼い頃のように抱きすくめたそうだ。力なく、とてつもなくやさしく。母は泣くじゃくったという。子どもだった私たちはそんなことがあったと知らなかったし、知っていても分かりはしなかっただろう。あふれるほど愛しているのに素直になれない。失ってから気づく大切な人や物事。

ちょうどあの頃の母と同じような年齢になって、私も今おなじような気持ちを抱えている。大好きだけど大嫌い、愛しているけど憎らしい。家族も、仕事も、友達も。そんな複雑な感情をうまく処理できずに、毎日が混乱している。でもきっと、うまく乗り越えられるんじゃないかな。だって、母は母らしく、ちゃんと生きてるんだもの。あの日の文鳥はまだこんなにも、心の中で生きてるんだもの。
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