既にそこにあるもの?1/んなこたーない
床でじかに眠るものにも
朝の玄関はあらわれる。(堀川正美)
1.
狂気じみた情熱をもってしても、われわれがその謎を解き明かすことが出来なかったのは、
何よりもそこにはひとつとして謎が存在していなかったからである。
われわれがその不合理な事件をでっち上げ、さらにその解決までをも自らに課したのは、
錯綜する無数の偶然にひとつの秩序を与えたいという、それもまた狂気じみた情熱のせいだった。
情況を神秘化し、かつ滑稽化しようという衝動は、
その情況が耐え難いほどのどん詰まりに陥っていることの証左に他ならない。
まさにわれわれはどん詰まりを自認した者同士の集まりだった。
われわれが
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