皮肉について/んなこたーない
 
うのはひとえにぼくの記憶力のおかげである。

「長いお別れ(ロング・グッドバイ)」は数回読み返したことがあるので、
いくつかの場面は今でもありありと思い返すことが出来る。これもまたぼくの記憶力のおかげである。
ここで取り上げたいと思うのは、小説の冒頭部、
つまり主人公フィリップ・マーロウとテリー・レックスの出会いの場面におけるワンセンテンスである。

高級クラブの駐車場で泥酔したテリー・レックスをフィリップ・マーロウが介抱する所から物語は始まる。
するとその場に居合わせた駐車場係が、そんなマーロウにたいして「酔っ払いには関わるべきではない」という
自らの人生哲学を披露する。それを
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