春の憂鬱/水町綜助
今朝春らしいものが突然に
額に寝汗として現れぼくはそのために頭が重い
ぐっしょりと水を含んだようだ
重たい頭はぼくをふらふらと外へと向かわせ
安普請のとびらを体の重みで押しあけるとどうだ、この春の噎せかえる匂いは
めりめりとはちきれていく命の口臭は
ぼくはそのまま歩きだしいつしか川沿いに広がる緑地帯をひとり歩いていた
だるい首筋に暖色の日向が覆いかかり
ぼくはいよいよ惰性で歩を進める
なおも命は
無遠慮に
人知れず
燃え上がり
そう熾(おき)火の様に
余熱は鳥のさえずりカラスのくろいつばさ
小さな子
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