飴玉のある風景(サボテン)/野火 後里
してやめた。
考えないことにした。
私たちの町は少し前、考えることをやめたのだ。
「さあ、マンマよマンマ。」
缶を手にとったときからサバはそわそわしている。
頭の中はきっと猫缶で一杯だ。
それでいい。お前も考えなければいいの。
食べる事もなく突き止める事もなく飴玉は降り続ける。
初めて空から降ってきたのは、そういえば私たちが考えるのをやめた日であった。
だがそれだってどうでもいい話だ。
缶詰をあけたらもう一度サボテンを見よう。
とても美しい色の。
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