あっかんべーの事情/佐野権太
 
(また、お出かけなんだって、つまんない
保育園で唯一娘のことを
好き
と言って遊んでくれた友達は
先月突然、家庭の事情で引っ越してしまった

この町にも
あの町にも
ひしめく家並み

(あちた、くるよ、ね?
見あげる瞳に
微笑むことしかできない、僕の事情

嫌い
と言う子には
あっかんべーをするのだという
そのかなしみを
止めることもできない

おや、ってなんだろ
きょーいく、ってなんだろ
がまん、がまん、がまん
僕はいったいどこに向かって
下のまぶたを引っ張ればいいのか
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