Queen of the town/んなこたーない
 
1

スタンドミラーの前に彼女は立っていた。
肩越しに覗くと、ブロンドの髪の少女と目が合った。

女装クラブの更衣室は、何故かG・K・チェスタトン「木曜の男」を思い出させた。

2

生牡蠣色。
吸盤。
粘着性の液体。

ブロンドの髪をかき上げて、ぼくは一言「まだ?」と訊ねる。

3

「SとFとそしてQ。
 ――Windy City、風の街、シカゴよ。
 ぼくはここにいる。
 ぼくはここで戦慄している」

「***の***は、***におけるトロツキズムである」

「聖家族の主人公、あるいはバースデイケーキのコンポジション」

「炸裂する中国製爆弾」

「炸裂する中国製爆弾のようなシンシナシティの亡霊」

思考はそこで急に途絶えて、ぼくは一言「もう?」と訊ねる。
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