わりきる/水中原動機
「1÷3=」と問われて
「はい、1/3です」
「小数点第二位を四捨五入して0.3です」
「0.33333333…で、循環小数です」
級友はいろいろな正しい答えを出し
そして問いを忘れていったが
私はずっと0.33333333のあとも
3を書き続けていたのだった
ノートの余白を埋め尽くし
机をまっくろにし
教室の床を浸食し
校舎の壁をおおってしまった
学校を卒業しても
私は3を書き続けていた
鉛筆、絵の具、食物、あらゆる体液
あるいはキーボードで3を入力し続けた
もちろん部屋も家も3であふれかえり
家族は3が何なのか問うのをやめ
私を見ることすらや
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