水/アンテ
コップの縁にとまったガラス細工の鳥が
思い出したように身体を傾けて
水を飲む様を演じる
赤い液体が体内を巡る
海のようだ
わたしの中に溜まった水が
満ち引きをくり返しながら
すこしずつ
わたしの内側を削り取っていく
ぽたん
時々しずくが落ちてきて
波紋を立てる
童話のなかの出来事
壷の底に溜まった水が飲みたくて
カラスはいくつも小石を中に落とす
ついには水にありつく
玩具の鳥がお辞儀をする仕組みは
あんがい簡単なのだろう
心がなにかを感じる仕組みも
わたしの起源も
考えれば判ることなのかもしれない
壷の底に水が貼り付いているのは
重力
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