優しい眠りに/なかがわひろか
 
あなたは眠る
外では世界の一部が
崩れ落ちているけれど
あなたは誰も見たことのないであろう
天使のような顔をし、眠る

あなたの眠りは
あなたに触れるほんの少しの空気を溶かす
その空気に触れた者は
皆一様に笑顔をもらす

あなたはいずれ知るでしょう
あなたのいる場所は
いつ消え去ってもおかしくないことに
あなたはいつか気づくでしょう
世界の人の多くが
笑っていないことに

あなたはそんな未来をあざ笑うかのような
優しい笑みを浮かべて
眠る

ただ願う
もし叶うなら
あなたは
何も知らず
何にも気づかず
生きて行って欲しいと

(「優しい眠りに」)

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