桃緑/千月 話子
 

 春子はミントの葉を散らし
 踏みしめている 半睡眠で

如月 彼女の足の裏は
いつも薄緑に染まり
徐々に褪せていく
まるで季節を旅しているようだと
裸足のかかとをくぅと縮め
まどろみ笑う口元に
波打つ髪が優しく揺れる


 春子は夜 丸い月の銀盆に
 丸い果物を重ねて食べる

桃の月 柑橘の月 葡萄の月
西瓜の月・・・は重すぎて
手から滑り落ち
悲しむ春子の手に残る
赤い果肉を
夜啼き鳥(ナイチンゲール)は
慰め ついばみ
「明日はライチをお食べよ
明日はライチーをお食べよ」と
西洋の名を持つ小鳥は
東洋の歌を歌うように高音で鳴いている

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