回想/イヴ
 

そのときはさ
俺は愛されてないのかも
なんて考えもしたの知らなかったでしょ?
だって姉貴には反対だったのに
俺のときはあっさり許してくれたからさ
どうせ俺のことなんか興味ないんだろ
なんて一人拗ねたりしたもんさ

でもさ
今になって分かるんだよ
あんたはやっぱり俺の親父なんだ…と
他の誰もが理解しようともしない
俺の変わった言動にも
あんただけは話を聞いてくれたっけ

いつかの光景覚えていますか?
二人きりで車のなか
ずっと続く沈黙のさきに
あんたが俺に言った言葉
「お前の好きなようにすればいい」
いったいどんな状況で
どうして急にそんなこと言ったのか
忘れてしまったけどさ
その言葉だけ忘れずに俺は生きてるよ


こんどさ家に帰ったときは
「ただいま」って大きな声で言うよ
だからさ
「おかえり」って小さな声でいいからさ
そう言ってほしいんだよ

なぁ 父さん
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