一つの仮説と、オレンジのコート/なかがわひろか
君と初めて会うまでの間
君について一つの仮説を立ててみる
君は今日
僕と会ってから
死のうと思っているだろうと
君は急に僕に会おうと言って
けれど僕はなぜか以前から
君と会う気がしていたから
何の疑問もなく
会うことになった
君は今日
ずっと考えている
オレンジのコートを選んだときも
助手席に乗っているときも
昼食を食べているときも
なんとなくお互い無言になったときも
どうやって
死のうかと
別れ際
君に言う
今日君は
死ぬ気だったろう、と
君は意味が分からないと
訝しがる
いや、いいんだ
それならいいんだ
遠い町へ
君は戻る
(「一つの仮説と、オレンジのコート」)
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