片恋の花/千月 話子
月の光り射す 真空の夜に
ひっそりと咲く 月下美人といふ花の
計り知れない悲しみは
茨となりて 一日たりとも
咲いてはいられぬ
私の この大輪の
白いドレスの花びらを
どうして見てはくれないの?
と 空にどんなに問うたところで
遥か彼方の 月星は
塵なる声と思ふだけ
叶わぬ恋の行方など
知って 真昼に咲くよりも
白い月に照らされて
焦がれる想いを抱き続ける
美しく咲く 宿命を
選んで清く散る花は
朝を 待たずに
涙で 涸れる
片恋の 月下美人の悲しみを
知らずに揺らす 夏の風
落ちた花びら 風に舞う
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