人食いの街/水町綜助
 
文化村通りを

僕は歩く

散開する人々

人々

人々

人々の群のなかを

自分を縫いつけるように

錯綜して

目的は

失せもの

探しもの

買いに行くの

うそだよ

なにも探していない

失くしたつもりなだけ

どこにも向かっていない

どうせ適当な店に入り

コーヒーでも飲んで

煙草の煙に巻かれて

忘れることを忘れることをまた忘れて

つらそうなかおつくって

晩飯になにを食うか考えてる

そのあと誰とやるか考えてる

何かほしいものがあるかと聞かれれば

ずっとなにも言わず


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