くらげ雲/
なかがわひろか
あの太陽を挑発するように
空に向かって主張する
大きな大きなくらげ雲
這い上がる排煙は
この世の隅々にまである希望を巻き込んで
絶望色に空を染める
その触手に刺された先に
家族があり
友があり
恋人があり
私があった
永遠かと思われた現在が
一瞬にして過去へと変わる
人々は紛う
宇宙が爆発したと
宇宙は嘲笑う
それは所詮小さな星の小さな破壊だと
けれどその小さな破壊、その中に
私たちはいたのだ
私たちは、生きていたのだ
(「くらげ雲」)
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