如月/
なかがわひろか
凍りついた重たい大気に圧されて
密やかに凍えるお前を
私はそっと抱きしめる
けれどお前は
私に触れられた瞬間
はっとしたように
すうっと空気に溶け込み
私の指の間をすり抜ける
捕える間もなく
お前はいつも
気づけばとうに、逃げ果てている
そして後から気づくのだ
お前がいたという証に
月の如しあやかし
またお前に会う日へと
ああ二月よ
今年もお前は
逃げていくのか
(「如月」)
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