たより/夕凪ここあ
 
郵便受けに
さくらの花びら

淡い水色の
小さな便箋

ゆううつの波に飲まれそうな朝のこと

春はまだ見えない
思えば今年の冬はいつもより少し長い

便箋の封を切ると
中からかすかなさくらの香り

もうずいぶん昔に
わたしたち、きっと双子だったことを
長いこと忘れてしまっていた

瞼の裏で今でも手を繋いでいる

綺麗なレースの髪飾り
揃いの空色ワンピース

互いの温度を感じるほどに
寄り添った小さなベッドで
春が待ち遠しかった

ふたりぶんの
ふたりぶんの
ふたりぶんの 日々

いちめんのやわらかい雪野原
の向こうには辿りつかない

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