たより/夕凪ここあ
郵便受けに
さくらの花びら
淡い水色の
小さな便箋
ゆううつの波に飲まれそうな朝のこと
春はまだ見えない
思えば今年の冬はいつもより少し長い
便箋の封を切ると
中からかすかなさくらの香り
もうずいぶん昔に
わたしたち、きっと双子だったことを
長いこと忘れてしまっていた
瞼の裏で今でも手を繋いでいる
綺麗なレースの髪飾り
揃いの空色ワンピース
互いの温度を感じるほどに
寄り添った小さなベッドで
春が待ち遠しかった
ふたりぶんの
ふたりぶんの
ふたりぶんの 日々
いちめんのやわらかい雪野原
の向こうには辿りつかない
[次のページ]
戻る 編 削 Point(8)