かいがら、から/夕凪ここあ
あなたがいつまでも
空の切れ端と手を繋いで眠るものだから
私は枕元でやわらかい髪を撫でるしかない
頬を寄せれば懐かしい夏の匂い
あなたの瞳の色と
私の夜の海のような色はよく似ている
貝殻に
耳をあてても海の音なんて聴こえない
いつまでもすきま風ばかり吹いている
だって大切な部分が欠けてしまっていた
私
長い間置き忘れられたせいで夜中彷徨っていた
海に還れたらいいのに
あの山が邪魔ばかりする
夕べだって
月は夜に抱かれたまんま帰ってこないもの
誰も見守るものがないから
あのさざめく梟の森で
私ずいぶん汚れてしまった
あなたのあどけない寝顔
私たちもうとっくにすれ違っている
なんてこと知らないふりをしていたいから
すきま風に鳴いてみても
海の声と混ざってしまって渦巻いている
私嫌なの
あなたがまっさらなのが
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