柘榴の実/千月 話子
 
昔学校の中庭に 石造りの小さな池があった
水藻で濁った水面に 時々魚の赤い背が
ゆらゆらと 波紋を立てる様子が見えた
池の周りの数本の ひょろりと伸びた細い木に
小さな実が 生りだして
その傍で 屈託無く遊ぶ子供達の
成長と共に いつの間にか
熟して 地面に落ちていた

割れた皮から覗く 赤いぶつぶつを
足で踏んで 潰してみると
ほのかに 甘酸っぱい香りがした

半透明の 小さな赤い実は
私の持っていた 玩具の赤いルビーの指輪より
ずっとずっと 上等に見えたので
ポケットに入れて 持って帰ろうとした時
誰かが「これ食べると人の肉の味がするんだよ」
と言ったので 
[次のページ]
戻る   Point(2)