無為自然、苦しみて、苦しむことなく。/生田 稔
 
え厭であった。だが聖書は知りたかった。
 苦しんでいる私というものを内海さんは知ったのであろう。「不幸なときはヨブ記をよむといいです」と言ってくれて、自分の聖書を貸してくれた。日本聖書協会発行の文語訳旧新約聖書であった。
 その日から、次の週までもう一度内海さんは訪れることを約束してくれたから、三度ヨブ記を読んだ。感動的であった。なんという心温まる話であろう。読んでみたい方は、読まれるがよい、最初の部分だけ紹介しよう。
 「ウツの地にヨブという名の人がいた。その人はとがめがなく、廉直で、神を恐れ、悪から離れていた。そして、彼には七人の息子と三人の娘が生まれた。それに、その畜類は羊七千頭、らく
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