そして、歩いてゆく/さち
 
つかる相手さえなく
人知れず痛んだのは
したたかに打ったつま先だけ

歩きやすくなったはずだと
誰かが言うけれど
変化しないのっぺらぼうの道は
このままずっと逃げられない
慢性化した哀しみのように見える
転がる小石は無く
揺れる花も無く

  耳の奥には
  一定のノイズが聞こえている
  どうといったほどでもなく
  無視できるほどでもなく

あの日
はっきりしない哀しさ だと
思ったものは
意外に熱を持っていたものだった と
気付く
アスファルトの道を
傍目に順調な足取りで歩いてゆく
蹴散らす小石が無い虚しさが
もっとはっきりしない哀しさを

ノイズの下に こびり付かせる



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