ちくしょう/水在らあらあ
 
かけられるのが落ちだ

地下街では
雨も日の光も知らない空気が
いくつもの腐りかけた肺を通り抜けて俺に媚びる
でも地下街の壁は涙を
水の流れを知っているから
俺はそっと寄り添って
息を止めて
遠い国の地上を想う
緑の 地上を

JRのホームで
タバコを吸っている若い男にキックする
タバコが悪いんじゃない
お前が悪いんじゃない
ただ
家に帰れ
親のところに帰れ

やさしいひとびとのやさしさが
消えてゆくのが
俺にはつらいんだ
それを何もせずに眺めている
この社会は痴呆性の老人だ
ろくな人生を歩まずに、すっころんで、ぼけた

洋服を着せられた菊人形
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