「月の亡骸」/なかがわひろか
月 :「私は絶えてしまったのです。もう貴方の光も受け止められません。」
太陽:「私の光が強すぎたのだ。貴女を憐憫の炎で焼き尽くしてしまった・・・。」
月 :「そんなこと仰らないで。幾年を経た私たちの思い、誰ぞがきっと唄にでもしてくれましょう。」
太陽:「そのような者がいるだろうか。人間?やつらは光に飢え、そして私に焼き焦がされた貴女を見ては、宵や、宵やと宴を開いている。」
月 :「それでもいいのです。私は最早誰も恨みは致しません。」
太陽:「淑やかに・・・」
月 :「貴方がそう思ってくださるのなら。」
太陽:「麗しく・・・」
月 :「貴方にそう見えているのなら。」
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