よもつしこめになるために/佐々宝砂
 
に眠る姫よ
あまりにみにくいので
誰からも愛されなかったという
姫君よ

わたしは橋を渡ってゆきますが
姫を踏みにじるのではありません

わたしは櫛をおいてゆきましょう
ちいさな靴もおいてゆきましょう
橋姫よ
わたしの服も指環もささげましょう

だから橋を渡らせてください
わたしは急がなくてはなりません
あのかたがやってくるまえに
わたしはあちらにゆきたいのです



 参 よもつひらさか

あってはならないことって
実はよくある話だったりするので
その坂はいつも人でごったがえしていて

わたしは騒がしいのが嫌いだから
すこし顔をしかめて

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