Starbow/佐々宝砂
 
の月影
足元には白く泡立つ波がうちよせ
潮騒は子守唄のようだった

あのひとはどうしても愛していると言わなかった
わたしも言わなかった
お祝いのワインは開けられずじまいで

わたしはその日をおぼえている

ああでもわたしは
そのあと
どうしたのだっけ

どうしてかわからないけど
わたしはここにいて
あのひとを遠い星の彼方に運びながら
あのひとが目覚める日を待っている

なにかひっかかる
ひっかかるけれど
どうしても思い出せない

おぼえていることしか書けないわたしは
詩人として失格かな
ええきっとそうなのかもしれない
でもこの言葉の順列組み合わせ
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