寺嶋さん/※
後ろ姿は、菜の花畑に吸い込まれると
また、ざわざわと
モンシロチョウの浮かび上がる先
少女の視線は、どこまでも
ざわめき、を追いかけて。やがて夕陽に辿り着く
それは頬に優しい、赤々とした温もり
迎えに来た母に、差し出す手紙
少女は知る、これは寺嶋さんからの、最後の便り
中には一枚の紙幣と共に
手術の成功を祈る、そして、ここで待っています
一言だけ、記された、想い
翌年の春
雪解けまで頑なに、拒まれ続けた光
ざわざわと、菜の花畑の分かれる音に
薄ら、少女は目を開いた
寺嶋さん・・・!
ぼんやりと、見える、見える
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)