お月見日和/なかがわひろか
 
月を見ながら死ぬ君は
夜明けの太陽を
むしろ恨むことだろう
君のいない明日を
やつは何かの始まりみたいに
照らし出す

君が死ぬ時間に
起きている人は
ただ眠れない夜に苦しんだり
むさぼるようなセックスをしたり
きっとそれなりにみんな
忙しい

中途半端な楕円形の月を見ながら
君はだんだん死んでいくことを
感じているんだろう

明日は何をしようか
一年後は何をしようか
十年後は

何をしようか

呪いの言葉

今夜
月を見ながら
君は
死んでいく

明日に生きない

君を

想う

(「お月見日和」)
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