流れゆく都市の色/結城 森士
 
ホール
中央上空にある出口
そこに向かって伸びる斜め直線のエレベーター
我々の姿が映し出される電光のテレビ
広がる都会の樹の、樹の無い森
聳えるビルの谷と、灰色の風
一寸の狂いも無い建築物の上空から
流れ落ちる直線の光線
或いは黒い影、男、女、子供はいない、皆、
黒い表情、黒い歩行、黒い目、黒い風
黒い意識、に引き連れられ

立ち止まる足
押し寄せる人々の群れなす足
バラバラな方向へ進む無数の足
耳を澄ませば聞こえてくるのは黒い風の音と無数の足音
自動ドアは呟く
いらっしゃいませ
ロビーの受付嬢に流れる
冷たい表情、黒い・・・青い空

ビルの上空の白い雲
ビルの上空の下の誰も座る事の無いベンチに
投げ出されている
女の白い足
上空の螺旋
白濁の雲

吐き出されている
白い息
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